はじめての靴えらび④ ― 靴と同じくらい大切な「靴下」の選び方

ファーストシューズ

📚 シリーズ「はじめての靴えらび」

はじめに

ふだん、靴は「靴下を履いた状態」で履くことを想定して作られています。そのため、どんな靴下を履くかによって、靴のフィット感は大きく変わってきます。

「靴下なんて、どれを選んでも足の健康には関係ない」——そう思っていらっしゃる方は、実はとても多いのですが、そうではありません。靴と同じように、成長期の子どもにとっては、靴下選びも足の健やかな成長を支える大切なポイントです。

近年は靴下も多様化し、さまざまなタイプが売られています。デザインや機能はうれしい一方で、「足の発達」という視点で見ると、少し立ち止まって選びたいものもあります。今回は、長年こどもの足に靴を合わせてきたシューフィッターの立場から、とくに「はじめて靴を履きはじめる頃(ファーストシューズ期)」の靴下えらびを中心に、ポイントをお話しします。ここでお伝えする考え方は、大きくなってからのお子さんや、大人の靴下えらびにも共通します。

足の指(足趾)が自由に動くことが、なぜ大切か

まず、靴下えらびの土台になる考え方からお話しさせてください。

幼少期の足の指(足趾/そくし)は、床を感じるためのセンサーであり、立つ・歩く・走る・踏ん張るための大切な支えです。足趾が自然に伸び、床に触れ、必要なときに広がったり踏ん張ったりできることで、子どもは足裏全体で体を支えやすくなります。

反対に、靴下によって足趾が丸め込まれた状態が続くと、足趾が床を感じにくくなり、踏ん張る力や蹴り出す動きが使いにくくなる可能性があります。

つまり靴下えらびのゴールは、シンプルに言えば「足の指が、靴下の中で自然に伸びていられること」。この一点を頭の片隅に置いて、次のタイプ別の話を読んでいただけたらと思います。

注意したい靴下のタイプ

① レース編みで、伸びにくいタイプ

レース編みでだぶつきやすいベビーソックス

レース編みなどで生地にストレッチ性が少ない靴下は、だぶつきやすいのが難点です。靴に足を入れるときに生地が滑らず折り重なってしまい、足がうまく入らないことがあります。見た目はかわいらしいのですが、靴を履く日には少し注意が必要です。

② 甲に大きな図柄(キャラクター・電車など)が入ったタイプ

甲にキャラクター柄が入ったこども靴下の表と裏
表は柄、裏は渡り糸(生地が厚く・幅広になります)。

アニメのキャラクターや電車などの図柄がはっきり入った靴下は、その柄をきれいに表現するために、靴下の幅が広めに作られていることがよくあります。

すると、せっかく足の形とサイズに合った靴を見つけても、靴下のせいで靴のフィット感がきつくなってしまうのです。その結果、「この靴はきついのかな」と感じて、本来よりも大きすぎる靴を選んでしまっている——というケースを、お店でもよく見かけます。

また、余った生地が折り重なって足趾を圧迫することもあります。

③ 裸足のように見えるショートソックス・伸縮の強いタイプ

大人用で人気の「裸足で履いているように見えるショートソックス」。そのこども版も増えてきました。

伸縮性の強いこのタイプは、一見よく伸びて足にぴったり合っているように見えます。ですが、サイズや形が合っていないと注意が必要です。靴下が元に戻ろうとする力で足の指がかかと側へ引っ張られ、5本の足趾がグーのように縮こまってしまい、サイズアウトしてきつくなった靴下を履いているのと同じ状態になってしまうことがあるのです。

さらに、伸縮性の強い靴下を履くと、指先が引っ張られるだけでなく、足全体が締めつけられて本来より細い形になってしまい、今度は靴のフィット感がゆるくなってしまうこともあります。

②と③は、ちょうど逆方向のことが起きています。靴下しだいで、靴のフィット感は「きつく」も「ゆるく」も変わってしまう——これが、靴下えらびをあなどれない理由です。

見落としがちな「ごろつき」

学校指定の靴下のつま先の縫い目(ごろつき)
赤い丸の部分が、つま先の縫い目の出っ張り(ごろつき)です。

もう一点、ぜひ知っておいていただきたいのが、靴下の「ごろつき」です。

写真は、ある学校指定の靴下です。赤い丸で囲んだ部分——つま先の縫い目の両端に、ポコっとした出っ張りがあるのがわかるでしょうか。

この小さな出っ張りが、靴の中で足の指に当たり、母趾(親指)や小趾(小指)を圧迫して、痛みが出てしまうことがよくあります。

高級靴下や高機能ソックスには、この出っ張りができない製法のものもあるのですが、子ども用や学校指定の靴下では、ほとんどないのが現状です。対策としては——

  • 靴下を履くときに少し引っ張るなどして、出っ張りの位置をずらして履く
  • (※自己責任になりますが)私が昔、自分の靴下でやっていた方法として、靴下を裏返して、両端の出っ張り(生地と糸の結び目)がとても大きいものを、ほつれない程度に糸切りばさみで少し切ると、当たらなくなったこともあります。

小さなことですが、子どもは「痛い」とうまく言えないことも多いので、覚えておいていただけたらと思います。

靴下の「すべり止め」をどう考えるか

裏に滑り止めドットの付いたこども用ショートソックス
裏に滑り止めドットの付いたタイプ。

靴下の裏に付いた、ぷつぷつとした滑り止め。これは本来、床で滑って転ばないためのものです。

ですが、靴を履くときには、必ずしも良いことばかりではありません。

  • 靴の中で靴下が滑らないため、足の指が引っ張られて動きが制限される
  • 滑り止めの厚みが出て、靴がきつく感じる
  • 通気性が悪くなる
  • 皮膚に負担がかかることがある

もちろん、冬場の冷たいフローリングを靴を履かずに歩くような場面では、滑り止め付きの靴下が転倒予防として役立つこともあります。普段自宅では裸足で過ごすことをおすすめいたします。

大切なのは、使い分けです。保育園やお教室からの要請で、靴下を履かなければならないときには滑り止め付き、靴を履いて出かけるときは滑り止めなしの靴下に替える——この一手間で、足の動きやすさはぐっと変わります。

では、どんな靴下を選べばいい?

ここまでの話をふまえて、靴を履くときに良い靴下の条件をまとめます。

  • すべり止めが付いていない
  • つま先がきつくない
  • かかとの位置が合っている
  • 縫い目(ごろつき)が強く当たらない
  • 厚すぎない
  • 汗を吸いやすい

反対に、避けたい靴下は次のとおりです。

  • 大きすぎて、靴の中で生地が余ってしまうもの
  • 小さすぎて、足趾をグーに縮めてしまうもの
  • 伸縮が強すぎて、足趾をかかと側へ引っ張ってしまうもの

私がいつもお客様におすすめしているのは、スペインの「コンドル(Cóndor)」のシンプルなリブ編みソックスです。1898年創業の老舗ブランドで、装飾が少なく、ほどよい伸縮で足になじみ、足の指の動きをさまたげません。

私自身も長年お店で使っていますが、コンドルの靴下はつま先のゴロツキが少なく、足の指を締め付けることがなく、それでいて全体的によくフィットします。さらに丈夫で、洗濯にも強いところもおすすめの理由です。これまでお話ししてきた「ごろつき」「締め付け」「フィット感」の心配が少ない、安心して選べる一足です。

おすすめのコンドルのリブ編みソックス
いつもおすすめしているコンドルのリブ編みソックス。

日本ではコンドル公式オンラインショップのほか、楽天市場などでも購入できます。コンドルには大人の女性が履けるサイズもあります。お子さんに選んであげる前に、ぜひ一度、お母さん自身が履いてみてください。リブの足あたりのよさや、つま先の縫い目のやさしさを、ご自分の足で実感していただけると思います。「自分が心地よいと思えた靴下を、わが子にも」——それが、いちばん確かな選び方かもしれません。

▼ お子さま用(9.5〜13.5cm・ファーストシューズ期の目安)

▼ 大人の女性用(まずはご自身で)

お店での、靴の合わせ方

最後に、お店で私がどんなふうにお子さんの靴下をチェックしているかを、少しだけお話しさせてください。

お子さんに靴を履かせるとき、私は靴だけでなく、靴下の幅やサイズが合っているか、足の指先が締めつけられていないかを瞬時に確認しています。そして、もし指が丸まっていたら、手で靴下のつま先を縦方向と横方向にやさしく引っ張り、足趾が真っ直ぐ伸びた状態にしてから靴を履かせるようにしています。

ご家庭でも、次の3つを見てあげてください。

  • かかとの位置が合っているか
  • つま先が引っ張られていないか
  • 子どもが立ったときに、足の指が自然に伸びているか

もし、靴下だけを履いた状態で足趾がグーのように縮こまるようなら、それは「サイズが小さい」「形が合っていない」「伸縮の戻りが強すぎる」のサインです。

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おわりに

靴下は、毎日身につけるものだからこそ、足の発達をそっと、けれど確実に支えてくれる存在です。

今回お話ししたソックスの話は、滑り止め靴下のこと以外は、大人にもそのまま通じます。ぜひ大人の方も一度、ご自分の靴下をチェックしてみることをおすすめします。

靴選びにこだわった日は、ぜひその足元の靴下にも、少しだけ目を向けてみてください。お子さんの足の指が、靴下の中でのびのびと動けていますように。

📍 子どもの革靴専門店 ジェンティーレ東京(gentile Tokyo)

イタリアの工房でつくられた子どもの革靴を、一人ひとりの足を計測し、関節や歩き方まで見たうえで、調整してお選びしています。計測からフィッティング・調整まで、お一人あたり1時間半ほどかけて、じっくり丁寧にお選びします。

  • 東京都品川区西品川1-20-10 2F
  • 東急大井町線「下神明駅」徒歩5分/JR京浜東北線ほか「大井町駅東口」徒歩10分
  • 営業時間:10:30〜18:00(日曜・祝日定休)
  • 完全予約制:メールまたはお電話(03-3493-5840)でご予約ください
    ※お電話が留守番電話の際はメッセージをお願いします。折り返しご連絡いたします
  • ご予約時間:午前は10時30分開始/午後は14時以降のお好きな時間で承ります

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この記事を書いた人
寺杣敦行

こどもの革靴専門店「ジェンティーレ東京」店主。
大手靴メーカーで材料調達・工場管理・品質管理を経て独立。
FHA(足と靴と健康協議会)認定 上級シューフィッター/幼児子ども専門シューフィッター。
元・FHA「幼児子どもシューフィッター資格講座」講師(シューフィッティングの座学・実技を担当)。
書籍『こどもの足を知る・診る・守る!』(田中康仁・高山かおる 編/全日本病院出版会)共同執筆。
書籍『シューフィッターに頼めば歩くことがもっと楽しくなる ― 靴の「ソムリエ」と呼ばれる専門家集団』(足と靴と健康協議会 編/フォレスト出版)第4章「人生を左右しかねない子どもの靴選び」を執筆。
アシックス公式InstagramのCMに出演。
2012年 TBSドラマ「猫弁」(主演:吉岡秀隆/ヒロイン:杏)にて、靴作りの工程・販売時の所作・靴の磨き方を監修、靴の特殊仕上げ加工を担当。
2021年5月21日 朝日新聞「EduA」にて、子どもの足の健康と靴について取材を受けました。▶ 掲載記事はこちら

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