はじめての靴えらび③ ― しっかり歩けるようになった時期の「ファーストシューズ」市販3ブランド

ファーストシューズ

📚 「はじめての靴えらび」シリーズ(全4回)

はじめに

前回のでは、まだハイハイが残る時期に「どうしても靴が必要なとき」の選び方を、アティパスとファミリアを例にお話ししました。

今回の③では、その次の段階——膝とモモをしっかり持ち上げて歩けるようになり、ハイハイが完全に抜けたお子さん向けの「ファーストシューズ」についてお話しします。市販の代表的な3ブランド(アシックス スクスク/ミキハウス/ニューバランス)を、私が実際に靴の内部寸法を計測したデータとともにご紹介します。

※当ブログでは、ひとりで5mほど歩けるようになってから選ぶ靴を「ファーストシューズ」と考えています。

※まだハイハイが残っている段階のお子さんは、前回のをご覧ください。

読み始める前に ― 同じ「13.0cm」でも、靴の中の長さは違います

靴選びでいちばん大切なのは、箱やタグに書かれたサイズ表示の数字ではなく、「靴の中の実際の長さ(内寸)」と、つま先の余裕=捨て寸(すてすん)です。

捨て寸とは、立ったときに一番長い足の指の先から、靴の内側のつま先までの空きスペースのことです。歩くときに足が前へすべる分、そして足が成長する分の余裕として必要になります。下の図のように、いくつかの要素を合わせて考えます。

ファーストシューズの捨て寸の図。スタイル上の余裕分・成長分・歩行時の移動分・体重をかけたときの伸長分を合わせた、つま先の空きスペースの説明。

捨て寸は、ひとつの数字ではなく、いくつかの要素が合わさってできています。上の図のように、次のような分を考え合わせます。

  • スタイル上の最低限の余裕(約4mm)
  • これから成長する分(約5mm)
  • 歩くときに足が前へ移動する分(約2mm)
  • 体重をかけたときに足が伸びる分(約6〜8mm)

とくに小さなお子さんの足は、立つ・歩くだけで長さが数mm変わります。だからこそ、つま先に適切な余裕=捨て寸があることが、靴選びでとても大切になります。

※通常、足の計測は立った状態で行いますので、上の図の「体重をかけたときの伸長分」は、考慮しなくても大丈夫です。

※靴のつま先のデザインが細い形状の場合や、足の幅がかなり広い・甲が著しく高いといった特徴がある場合には、この図に示した捨て寸より多くの余裕が必要になることがあります。

※反対に、足の幅が極端に狭い(細い)方や、甲の厚みがとても薄い方の場合は、この図に示した捨て寸より少なめにすることもあります。

ここで、私がこの捨て寸の図を作った理由を、少しお話しさせてください。

数年前、あるお子さんの足を見せていただく機会がありました。あるお店で店員さんに足を計測してもらい、すすめられたサイズを購入されたそうです。ところが、2週間ほど履いたところで足の指が圧迫され、水ぶくれができてしまっていました。私が確認すると、足のサイズより2サイズも小さい靴だったのです。

お子さんは、靴が合っていなくても、自分でそれを訴えることができません。それどころか、私たち大人でさえ、自分の靴が本当に足に合っているか分かっていないことが少なくありません。

だからこそ、捨て寸や内寸の考え方を、お店のお客様だけでなく、一般の消費者の方にも少しでも知っていただきたい——そんな思いで、この図を作り、お伝えしています。同じように足を痛めるお子さんを、一人でも減らせたら、と願っています。

そして、ここがとても大切なのですが——同じ「13.0cm」と表示された靴でも、メーカーによって靴の中の長さ(内寸)はこんなに違います。実際に私が計測した数値が、こちらです。

ブランドサイズ表示靴の内寸取り外し式中敷の長さ片足重量
アシックス スクスク13.0cm13.3cm13.5cm81g
ミキハウス13.0cm13.0cm一体型(取り外し不可)98g
ニューバランス13.0cm13.3cm13.5cm84g
(参考)ファミリア13.0cm12.6cm一体型(取り外し不可)64g

※中敷き(インソール)には、取り外せるタイプと、本体に固定された一体型があります。一体型は中敷きだけを外して長さを測ることができないため、靴全体の内寸でご確認ください。

※ファミリアはハイハイ期に履く靴で、上の3ブランド(ファーストシューズ)とはカテゴリーが異なります。軽量なのは設計上当然のことで、重量を直接比べるものではありません。ここでは「同じ13.0cm表示でも内寸が違う」ことの参考として載せています。なお、ファミリアにも、ほかの3ブランドと同じように、ハイハイが抜けて歩けるようになってから履くタイプの靴があります(今回比較に載せているのは、その前のハイハイが残っていても履いていただけるモデルです)。

※靴の重量について:お子さんの筋力の発達には個人差が大きいため、重量は神経質になりすぎる必要はありません。膝やももをしっかり持ち上げて歩けていれば、多少の重さの違いはそれほど気にしなくて大丈夫です。ただし、靴を合わせたあとは、実際に歩いてみて、腕の位置がそれまでと比べて上がっていないかを確認していただくことをおすすめします。腕の位置が下がっている状態でしたら、問題ないと思います。

歩き方と腕の位置の関係。歩行が安定してくると、バランスのために上げていた腕が自然に下がってくる様子のイラスト。

歩き始めのお子さんは、バランスを取るために腕(手)を高く上げて歩きます。歩行が安定してくると、その腕が自然と下がってきます。新しい靴を履いて歩いたときに、腕の位置がそれまでより上がるようであれば、まだ慣れていない・安定していないサインかもしれません。逆に、腕が下がったまま歩けていれば、その靴で安定して歩けていると考えてよいでしょう。

同じ「13.0cm」表示でも、靴の内寸は12.6cm〜13.3cm。最大で7mmもの差があります。たった数mmと思われるかもしれませんが、小さな足にとっては大きな違いです。だからこそ、表示の数字だけで選ばず、必ずお子さんの足を計測し、実際に履いて確かめることが大切です。

なお、アシックスとニューバランスは取り外しできる中敷きが入っています。中敷きを抜いて足を乗せれば、つま先の余裕(捨て寸)を目で確認しやすく、洗って清潔に保てる利点もあります。ミキハウスは中敷きが一体型(取り外し式ではない)タイプです。

第1章:アシックス スクスク ― ややスリム〜普通幅タイプの足に

このモデルは、ハイハイが完全に抜けてから履くファーストシューズです。3ブランドの中では幅がやや細めの設計で、ややスリム幅〜普通幅タイプの足のお子さんにフィットしやすいと思います。

  • :ミキハウス(2E)よりも若干細めの設計。ややスリム〜普通幅の足に。
  • ベルト:2本ベルトで、足のウエスト部分(中足部)とインステップ(甲)の両方をしっかり固定できます。
  • 履き口:小さめなので、足首の細いお子さんにもフィットしやすい。
  • 素材:甲は表面も裏面もメッシュ素材で、蒸れにくいつくり。
  • インソール:土踏まずからかかとまでを支える形状。
  • 靴底:フラットなゴム底で適度な厚みがあり、安定して歩きやすい。
  • かかと:ミドルカット丈+しっかりしたカウンター芯で安定。
  • 内寸13.3cm(最大グループ)・片足81g(3ブランド中いちばん軽い)・取り外し式中敷あり。
アシックス スクスクの履き口。履き口が小さく細い足首にもフィットする様子。

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第2章:ミキハウス ― 普通〜幅広(2E)タイプの足に

このモデルは、膝とモモをしっかり持ち上げて歩けるようになった段階から履けるファーストシューズです。(※ミキハウスには、ファミリアと同じようにハイハイがまだ抜けていない時期に履けるタイプもありますが、このモデルは歩けるようになってからのものです。)2Eの幅広設計で、普通〜幅広タイプの足に向いています。

  • :2Eの幅広設計。爪先も広め。普通〜幅広タイプの足に。
  • 素材:甲はソフトで薄めのメッシュ生地、裏面と中敷きはパイル素材で、フィット感がよく足なじみも良い。
  • ベルト:1ベルトタイプ。甲のベロ部が一部縫い付けられていてズレず、足を入れた後にフィットしやすく、脱ぎ履きもしやすいつくり。保育園などでも扱いやすいと思います。
  • かかと:ミドルカット丈+かかとの芯材で、足のかかとを支える構造。
  • 靴底:フラットなゴム底で、足の曲がる位置で靴も曲がる構造。
  • 内寸13.0cm(3ブランド中いちばん小さめ)・片足98g。
ミキハウスのベビーシューズ。ベロが縫い付けられ脱ぎ履きしやすくフィット感が高い様子。

ご注意:アシックス・ニューバランスに比べ、同じ13.0cm表示でも長さの設計が小さめです。必ず販売店で足の計測とフィッティングをしてもらうことをおすすめします。
※ミキハウスのベビーシューズの中にはミズノとのコラボ商品もあり、その場合は靴の設計がミズノの設計基準となります。

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第3章:ニューバランス ― 幅広・甲高タイプの足に

このモデルは、爪先の形が広く、甲の高い足にもフィットしやすいつくりで、幅広・甲高タイプのお子さんに特におすすめできます。

  • 幅展開:ワイド(W)とエクストラワイド(XW)の2種類がありますが、日本ではワイド幅のみの取り扱いのようです。
  • 爪先:形状が広く、母趾の付け根から小趾の付け根までゆったりとしたつくり。
  • ベルト:甲のベルトが一体型で、両端がベルクロ仕様。幅だけでなく、甲の高い足でもフィットしやすい仕立てです。
  • かかと:かかとを包み込むように丸いカーブで、さらに靴底のゴムがかかとまで巻き上がり、かかとをしっかり支えます。
  • 靴底:薄いゴムのフラット。取り外しできるインソールもフラットで、裸足の感覚に近く履けます。
  • 内寸13.3cm(最大グループ)・片足84g・取り外し式中敷あり。
ニューバランスのベビーシューズ。ベルトとベロが一体型で甲の高い足にもフィットしやすい様子。

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足のタイプ別 ― どの子に、どの靴が合う?

足の形は一人ひとり違います。下の図のように、大きく3つのタイプに分けて考えると、選びやすくなります。(足のタイプについてはの「読み始める前に」でも詳しく解説しています。)

子どもの足の3タイプ比較。①幅広・甲高タイプ、②普通幅タイプ、③細幅・スリムタイプ。
  • ① 幅広・甲高タイプ(ふっくらと脂肪がついた足)→ ニューバランス
  • ② 普通幅タイプ(幅も甲も中くらい)→ ミキハウス(やや幅広寄り)/アシックス(やや細め寄り)
  • ③ 細幅・スリムタイプ(脂肪が少なく幅が狭い足)→ アシックス

3足に共通する、良い設計

今回ご紹介した3足は、ブランドごとに個性がありますが、歩き始めのお子さんにとって大切な、共通の良い設計があります。

  • 爪先が反り上がっている(トゥスプリング):足がスムースに前へ出て、つまずきにくいように設計されています。
  • フラットなゴム底:歩き始めの足に負担が少なく、しっかり地面をとらえられます。
  • かかとを支える構造:ミドルカット丈や芯材、靴底の巻き上げなどで、かかとを安定させます。

サイズの目安と、履き替えのタイミング

参考までに——今回ご紹介した3足(いずれも13.0cm表示)は、足の実寸が次のくらいのお子さんに試していただきたいサイズです。

  • アシックス スクスク:足の実寸 約12.0〜12.3cm
  • ミキハウス:足の実寸 約11.9〜12.0cm
  • ニューバランス:足の実寸 約12.0〜12.3cm

※これは、ファーストシューズの場合の目安です。

また、靴を履ける期間には、成長の個人差がとても大きく関わります。1ヶ月できつくなるお子さんもいれば、3ヶ月ほど履けるお子さんもいます。

靴を履かせるときに、急に足が入りにくくなったら、それは足が成長して靴がきつくなってきたサインです。早めのサイズアップをおすすめします。

できれば、購入したお店で定期的に足を計測してもらうと安心です。私のお店では、次回の計測時期(ご来店予約の時期)をお伝えすることで、足が窮屈なまま過ごしてしまうことを防ぐようにしています。

いちばん大切なこと ― 必ず計測と試着を

ここまでデータと特徴をご紹介してきましたが、最後にいちばんお伝えしたいことがあります。それは、必ずお子さんの足を計測し、実際に履いてフィッティングをしてから選んでいただきたいということです。

見てきたように、同じ「13.0cm」表示でも靴の内寸は7mmも違います。さらに、足の幅・甲の高さ・足首の細さも一人ひとり違います。ネット上の数字や口コミだけで決めてしまうと、せっかくの靴が足に合わないことも少なくありません。お近くのお店で足を計測し、お子さんの足の形に合った一足を選んであげてください。

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おわりに

歩けるようになったお子さんのファーストシューズは、足の成長を支える大切な一足です。今回ご紹介したアシックス・ミキハウス・ニューバランスは、それぞれ向いている足のタイプが異なります。お子さんの足の形を知ったうえで、ぴったりの一足を選ぶ参考になればうれしいです。

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この記事を書いた人
寺杣敦行

こどもの革靴専門店「ジェンティーレ東京」店主。
大手靴メーカーで材料調達・工場管理・品質管理を経て独立。
FHA(足と靴と健康協議会)認定 上級シューフィッター/幼児子ども専門シューフィッター。
元・FHA「幼児子どもシューフィッター資格講座」講師(シューフィッティングの座学・実技を担当)。
書籍『こどもの足を知る・診る・守る!』(田中康仁・高山かおる 編/全日本病院出版会)共同執筆。
書籍『シューフィッターに頼めば歩くことがもっと楽しくなる ― 靴の「ソムリエ」と呼ばれる専門家集団』(足と靴と健康協議会 編/フォレスト出版)第4章「人生を左右しかねない子どもの靴選び」を執筆。
アシックス公式InstagramのCMに出演。
2012年 TBSドラマ「猫弁」(主演:吉岡秀隆/ヒロイン:杏)にて、靴作りの工程・販売時の所作・靴の磨き方を監修、靴の特殊仕上げ加工を担当。
2021年5月21日 朝日新聞「EduA」にて、子どもの足の健康と靴について取材を受けました。▶ 掲載記事はこちら

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