はじめての靴えらび② ― まだハイハイが残る時期に「靴が必要なとき」の市販2ブランド

ファーストシューズ

📚 「はじめての靴えらび」シリーズ(全4回)

はじめに

ではファーストシューズの時期や考え方をお伝えしました。今回はその続きとして、市販されているベビーシューズについて、子ども専門店主の視点でご紹介させていただきたいと思います。

実は、日本とヨーロッパでは、こども靴の文化に少し違いがあります。ヨーロッパでは、今でもベビーシューズといえば革靴が主流です。一方、日本でファーストシューズとして履かれているのは、布製の靴やスポーツメーカーのスニーカーがほとんどです。

当店ジェンティーレ東京は、イタリア製の本革のこども靴を専門に扱うお店ですので、日本のご家庭でよく選ばれている市販のベビーシューズは取り扱っておりません。ただ、長年お店を続けてきた中で、たくさんのお子様の足を見させていただく機会に恵まれてきました。

今回ご紹介する5つのブランドの靴は、いずれも、お子様が初めて当店にお越しになった時に履いていらっしゃった靴や、「出産祝いに頂きました」「1歳のお誕生日プレゼントです」とお持ち込みになった靴ばかりです。多くのご家庭で選ばれているブランドなのだろうな、と感じています。

その際、お子様の足の特徴と靴の形状やサイズが合っていないケースを、これまで非常に多く目にしてきました。

そこで——

幼児子どもシューフィッターの立場から、専門家向けではなく、親御様向けに、できるだけわかりやすく、それぞれの靴の特徴と、私が個人的に計測した内部寸法をお伝えしたいと思います。当店に来ていただけない多くの親御様にも、できるだけわが子の足に合う一足を選んでいただけるように——そんな願いを込めて、このページをご用意しました。

なお、今回ご紹介する靴は、すべて私自身が実際に購入し、手に取って構造やサイズを一つひとつ確認したうえでご紹介しています。

お断り
本記事でご紹介する内容は、当店主が個人的に計測・観察した情報であり、各メーカーの公式データではありません。あくまで「参考情報」としてお読みいただき、最終的にはぜひ、各メーカーの直営店や取扱店で実際にお子様の足に合わせて試着されることを、心からおすすめいたします。

読み始める前に ― 足のプロポーションは千差万別

靴のご紹介に入る前に、ひとつだけ大切なことをお伝えさせてください。

お子様の足は、本当に一人ひとり違います。足の長さが同じでも、幅が広い子・狭い子、甲が高い子・低い子——足のプロポーションは千差万別です。

ですから、「このブランドがいちばん良い」という選び方ではなく、まずお子様の足がどんなタイプかを知り、それに合った靴を選ぶこと。これが、私が18年見てきた中でいちばん大切だと感じていることです。

子どもの足の3タイプ比較。①幅広・甲高タイプ(ぽっちゃりと脂肪がついた足)、②普通幅タイプ(幅も甲も中くらいの足)、③細幅・スリムタイプ(脂肪が少なく幅が狭い足)。1歳ごろの赤ちゃんの足とそれぞれの特徴。

実際に当店には、「デパートで何足も試したけれど、どれも足が入らなくて……」と、足の幅が広いお子様や甲の高いお子様を連れて、お困りで来店される親御様も少なくありません。市販の靴は、ある程度「標準的な足の形」を想定して作られているため、足のタイプによっては合う靴を見つけにくいことがあるのです。

そこで本記事では、各ブランドを「どんな足のタイプに合わせやすいか」という観点でご紹介していきます。お子様の足のタイプを思い浮かべながら読んでいただけると幸いです。

なお、ベビー期は、一生のうちで足がもっとも大きく成長する時期です。そのため、どんなに足に合った靴を選んでも、数ヶ月でサイズが合わなくなっていきます。「せっかく買ったから」と無理に履かせ続けず、こまめにサイズを確認していただくことが、とても大切です。

第1章:ハイハイがまだ残っている段階のファーストシューズ

はじめに、大切な前提をお伝えします。

歩き始める時期には、お子様一人ひとりでかなり大きな個人差があります。ですから、靴を履かせ始める時期は「月齢(生後何ヶ月か)」ではなく、「発達段階」で考えることが大切だと、私は考えています。

そして、初めての靴・歩き始めの靴は、足を「矯正する道具」ではなく、足を「守る道具(保護具)」です。歩き始めたばかりの時期、室内では靴は必ずしも必要ではありません。英国のNHS(国民保健サービス)などの資料でも、室内では裸足で過ごすことで、足の筋力や足の指で「つかむ」動きが発達しやすいと説明されています。

それでも、保育園などからの要請で、つかまり立ち・伝い歩き・一人歩きを始めても、まだハイハイが残っている段階で靴を用意しなければならない場合があります。この章では、そうしたときに、この時期の足への負担ができるだけ少ない靴として、attipasとファミリアをご紹介します。

attipas(アティパス)― 幅広の足用

attipasは、靴下に薄いゴム底が一体になっているタイプのベビーシューズです。一見すると靴下のような見た目ですが、足裏にはしっかりと滑り止め加工が施されたゴム底が付いています。

構造の特徴

  • 上部:通気性の良いリブ編みのコットン素材(靴下そのもの)
  • 靴底:薄く、フラットで柔軟性のあるゴム底(約40g)
  • つま先とかかと:柔らかいゴム素材で保護

適した発達段階・おすすめのタイミング

attipasは、伝い歩きから歩き始め頃のお子様、特に一人で歩く際に腕の位置がハイガード(高い位置)やミドルガード(中くらいの位置)にある時期に、おすすめできる靴だと感じています。

足と靴が一体化した構造で、裸足に近い感覚でバランスがとりやすいこと。靴底が薄く、かかとのカウンター芯も柔らかいため、ハイハイが残っていても足首に過度な負担がかかりにくいことが、良いポイントです。

卒業の目安

  • 一人で5メートル程度歩けるようになった頃
  • またはハイハイが完全に見られなくなった頃
  • 腕の位置がローガードになった頃
  • 一般的な使用期間の目安:約2〜3ヶ月

これらの時期に、より足を守りながら鍛えてゆく、しっかりとした作りの「歩き始めシューズ」に切り替えていくことをおすすめしています。

履かせやすさ・お手入れ

履かせるには少しコツが必要ですが、YouTubeなどで履かせ方が紹介されていますので、ご参考になさってみてください。公式情報によると、手洗い・洗濯機洗いどちらも可能で、速乾性に優れているとのことです。お子様の靴は汚れやすいので、洗える点はありがたいですね。

サイズ展開

attipasのサイズ展開は10.8cm、11.5cm、12.5cm、13.5cmの4種類です。私が計測した範囲では、表示サイズと内部の実寸はほぼ一致していました。サイズの選び方については、公式サイトの案内が最も信頼できる情報ですので、購入前にぜひそちらをご確認ください。なお、ベビーシューズ全般のサイズ選びについては、本シリーズの後半「サイズ選びのヒント」でも、私個人の経験から感じていることをお伝えする予定です。

価格帯と購入

価格帯は約4,000円以下と、比較的買いやすいお値段で、お試しにもしやすい印象です。公式サイトや取扱店、オンラインショップなどでお求めいただけます。

ファミリア ― やや細め〜普通幅の足用(甲高対応)

ファミリアのベビーシューズは、日本の老舗子供服ブランド「familiar」が手がける、デニム素材のおしゃれな一足です。出産祝いや1歳のお誕生日プレゼントとしても、よく選ばれているブランドだと感じています。

構造の特徴

  • 上部:柔らかいデニム素材(コットン・ポリエステル)
  • 靴底:薄いゴム素材、フラットな作り
  • かかと:カウンター芯は柔らかめ(attipasと同じくらい)
  • 足首周り:柔らかいクッション入り
  • 中敷き:フラットで、裸足に近い感覚で履ける
  • 着脱:ベルクロ式、履き口が大きく開く

適した発達段階

ファミリアも、attipasと同じくハイハイがまだ残っている段階のファーストシューズとして、おすすめできる構造をしていると感じています。足首周りのクッションが柔らかく、かかとのカウンター芯も柔らかめなため、ハイハイをしても足首に負担をかけにくい構造です。靴底が薄いゴム素材でフラットなため、バランスよく歩いていただける設計になっています。

履かせやすさ

ベルクロ式で履き口が大きく開くので、とても履かせやすいのが嬉しい特徴です。

足の特徴との相性

足の形としては、attipasに比べてやや細めの形状で作られています。公式では「甲高対応」とされていますが、これは「甲が高いお子様でも履ける」という意味で、幅とは別の話です。甲が高くても幅が細めのお子様もいらっしゃいますので、やや細め〜普通幅の足のお子様に、特に合わせやすい印象です。

卒業の目安

attipasと同様、

  • 一人で5メートル程度歩けるようになった頃
  • またはハイハイが完全に見られなくなった頃
  • 腕の位置がローガードになった頃

が切り替えのタイミングです。

サイズ展開

ファミリアのサイズ展開は12.0cm、12.5cm、13.0cm、13.5cmの4種類です。私が13.0cm表示のものを計測したところ、内寸は約12.6cmでした。

価格帯

価格は9,900円(税込)です。デニム素材で品のあるデザインのため、おしゃれな贈り物としても人気があります。

おわりに

今回は、ハイハイがまだ残っている段階のお子様に向けて、attipasとファミリアの2ブランドをご紹介しました。

どちらも、裸足に近い感覚で、足首に負担をかけにくい優しい構造が共通しています。お子様の足のタイプ(attipasは幅広、ファミリアはやや細め〜普通幅)を思い浮かべながら、選ぶ参考にしていただけたら嬉しいです。

次回(Part 2-B)では、一人で5メートル以上歩けるようになってからのベビーシューズとして、ニューバランス・ミキハウス・アシックスの3ブランドをご紹介する予定です。どうぞお楽しみに。

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この記事を書いた人
寺杣敦行

こどもの革靴専門店「ジェンティーレ東京」店主。
大手靴メーカーで材料調達・工場管理・品質管理を経て独立。
FHA(足と靴と健康協議会)認定 上級シューフィッター/幼児子ども専門シューフィッター。
元・FHA「幼児子どもシューフィッター資格講座」講師(シューフィッティングの座学・実技を担当)。
書籍『こどもの足を知る・診る・守る!』(田中康仁・高山かおる 編/全日本病院出版会)共同執筆。
書籍『シューフィッターに頼めば歩くことがもっと楽しくなる ― 靴の「ソムリエ」と呼ばれる専門家集団』(足と靴と健康協議会 編/フォレスト出版)第4章「人生を左右しかねない子どもの靴選び」を執筆。
アシックス公式InstagramのCMに出演。
2012年 TBSドラマ「猫弁」(主演:吉岡秀隆/ヒロイン:杏)にて、靴作りの工程・販売時の所作・靴の磨き方を監修、靴の特殊仕上げ加工を担当。
2021年5月21日 朝日新聞「EduA」にて、子どもの足の健康と靴について取材を受けました。▶ 掲載記事はこちら

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